大庭園を左手にして廊下を進んだその先に、昭和12年に完成した、日本一の大東司と謳われる男女兼用の水洗トイレがあります。水洗トイレが珍しかった当時は、このトイレを一目見ようと大勢の人が押し寄せたと言われています。
踏み入るのをためらうほどの威圧感がある烏蒭沙摩明王像(うすさまみょうおう)が立っています。この烏蒭沙摩明王像は、高村晴雲の一代傑作であり、日本一大きなご尊像です。トイレの右手には、男性用の白い筒型小便器が並び、正面には木の扉の個室があります。天井を仰ぐと、陰影が美しい網代天井、中央のドーム型天井からモダンな照明が下がっています。ピカピカに磨かれた木の床に降りると、ここがトイレだということを忘れてしまいそうになりますが、今でも現役で使用されています。
古代インド神話において元の名をアグニと呼ばれた炎の神で、人間界と仏の世界を隔てる天界の「火生三昧(かしょうざんまい)」と呼ばれる炎の世界に住むと言われ、人間界の煩悩が仏の世界へ波及しないよう、聖なる炎によって煩悩や欲望を焼き尽くすと言われています。また、清浄なる自己に目覚めさせる徳をもつといわれ、禅宗では東司の仏様として祀られています。大東司を見守る烏蒭沙摩明王像は、腕が四本で、左手は天を指し、髑髏を持ち、右手は宝棒と独銛を持っています。右足で磐石の上に立ち、左足で歓喜天を踏んでいます。憤怒の顔で首に瓔珞をかけ、頭の毛は逆立ち、鬼気迫るものを感じます。
トイレのお札があります。烏蒭沙摩明王様のお札を、トイレの中のドアや、壁の目線より少し高い場所に画鋲を使わずに貼るか、お札入れの中に入れ、棚に置きます。トイレを使用する時や掃除をする時に、日々健康でいられることに感謝の念を送ると良いとされています。