日本唯一の秋葉三尺坊大権現様の御真躰をお祀りする、全国有数の火防霊場となっています。秋葉総本殿に向かう階段を上って行くと、両脇の天狗が睨みをきかせて立っています。立っている像は、人々を救おうと立ち上がった姿だと言われています。私たちの心を見透かすような力強い視線に、思わず目を伏せてしまいそうになります。黄金に輝く「秋葉総本殿」の扁額は、有栖川宮幟仁親王により賜ったものであり、全国津々浦々に名声が響き渡り、多くの信者の尊崇を受け、今日に至っています。
掛け軸、徳川家康公と仙隣等膳和尚の「睡る可し(ねむるべし)」の一場面を描いた絵、拝殿内に貼られた有名人の千社札も見つける事ができます。もともと、秋葉三尺坊大権現様の御真体は、秋葉山秋葉寺(あきはさんしゅんようじ)という、秋葉山の山頂の寺に祀られていましたが、明治6年の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により、廃寺となってしまったため、可睡斎が三尺坊様の御真体、仏具全てを引取り、大切にお祀りするようになりました。厳かで仄暗い本殿では朝昼晩、365日休むことなく、東日本大震災、福島第一原発事故の収束、台風の被災地の復興、日本の、そして世界の平和を祈願しています。
本殿に響き渡り、霊験あらたかな雰囲気となります。拝観をされた方はお勤めの様子を随時見学することができます。秋葉三尺坊大権現 三尺坊様は、今から約1300年前の現在の長野県戸隠で生まれ、新潟の越後蔵王権現堂十二坊の一つである三尺坊というお堂で修行されました。修行の末、秘密奥義を極めて神通力を得て、火を自由自在に扱うことができる火生三昧(かしょうざんまい)を取得し、観世音菩薩三十三化身の一つである迦樓羅身(カルラシン)に変身したと言われています。秋葉三尺坊様は、迷いや苦しみから人間を救い、悟りの世界に渡し導くため、三大誓願をおこし火防の霊場を開かれました。
「第一我を信ずれば、失火と延焼と一切の火難を逃す。第二我を信ずれば、病苦と災難と一切の苦患を救う、第三我を信ずれば、生業と心願と一切の満足を与う」というものです。また、私たち人間の中には三毒の炎が存在していると言われています。第一に「欲しい欲しいの貪りの心」、第二に「憎い憎いの怒りの心」、第三に「なんだかんだの愚痴の心」です。三尺坊様は、「唵毘羅毘羅乾毘羅乾能娑婆訶(おんぴらぴらけんぴらけんのうそわか)」※1 と七回繰り返すならば、三毒の炎をはじめ、一切の障害がなくなり、心からの願いが成就すると説かれました。今でも多くの信者が霊験あらたかな三尺坊様のもとを訪れ、広く信仰されています。